今年度はまず、舌運動タスクを行わせるための装置の製作に着手した。今年度購入した物品は主に、装置を自作するためのものであり、アクリル板、ネジ類、バネ、電子部品、工作用具などである。膨大な時間をかけてまで自作する利点は、製作費用の問題以外に、一旦作ってしまえば装置の改良が容易であるということである。タスクは当初、二重のスライドドアを異なる方向に舌で開けたのち、その前方にある報酬を舌尖ですくい取るものであった。しかしながら、試作の過程で、2枚目のドアを途中まで開けて舌を差し入れてしまうことがわかったので、さらに3枚目を追加し、2枚目を最後まで開けた時のみ、ばね仕掛けで3枚目が開くよう機構部分を工夫した。このような自発的な連続動作においては、受動的に触刺激を受容する場合と違い、舌運動タスクの各トライアル間で、発火パターンが多様に変化することが予想される。データ解析としては、ある特徴的な発火パターンが出現するニューロンと全く生じないニューロン、などといった分類をすることが望ましい。このためには、トライアル全体をまとめて平均化するのではなく、スパイク列を時系列パターンにもとづきクラスター分けする数値解析が必要になる。これを実現するため、先行論文のアルゴリズムを参照の上、数値計算システムScilab上で、神経スパイク列の発火パターンをクラスター分けするためのスクリプトを作成し、疑似スパイク列を用いたシミュレーションで正常に動作することを確認した。このクラスタリング手法は、事前にクラスター数を設定する必要がなく、最適なクラスター数も決めてくれるという利点を有する。
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