研究概要 |
ヒトの摂食、構音では異なる舌運動を連続的に制御することが必要となるが、その神経機構は明らかではない。大脳中心後回の一次体性感覚野(SI)とその後方領域は、刻一刻と変化する舌の状態をモニターし、運動の制御や認知に役立てているものと考えられる。特に、SI後方部とそれに隣接する連合野は、前頭葉の運動関連領野との相互連絡があるため、感覚情報に依存しないニューロン活動がみられる可能性がある。この点を明らかにするためには、動物に、ある程度規格化された連続舌運動課題を学習させニューロン活動を記録する必要がある。本研究では、まず課題に必要な装置を製作した上で、Macaca fuscata に連続舌運動課題を学習させた。舌運動課題は、方向の異なる2枚のスライドドア(上下・左右)を連続的に開け前方の報酬を舌尖で取るものである。まず、試作装置を実験者が手に持ち動物の顔面に近づけ予備訓練を行うと同時に、最適なドアの大きさやその取っ手の形状について検討した。最終的な操作パネルを製作した後、頭部固定下での訓練を進めた。操作パネルを90度ずつ回転させてドアの操作方向を変え4種類の課題とした。予備訓練が奏功し、頭部固定下での習得は順調であり、約2週間で4種類すべての課題について習熟し、パネルの向きを頻繁に変えても的確に連続動作を行うようになった。1試行の最短遂行時間は約1.5秒であり、開始信号、最初のドア操作開始、2番目のドア操作開始、報酬タッチ、閉口、の時間間隔は、それぞれ約0.5, 0.4, 0.4, 0.2秒であった。課題を学習させた後、記録実験を開始し、データ収集を行った。同時記録された複数ニューロンは、しばしば、連続舌運動の異なる相で活動していた。このような構成は、脳の局所領域が舌運動課題の時間経過をモニターする上で都合がよい。実験動物は、ナショナルバイオリソースプロジェクトから提供を受けた。
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