本研究においては、味蕾を形成する口腔上皮幹細胞(味蕾幹細胞)特有の組織幹細胞の維持領域を同定し、味蕾幹細胞が維持されるニッチの分子機構を解析することによる味蕾幹細胞ニッチのパラダイムシフトを目的としている。 そこで、本年度は1)味蕾幹細胞の維持に関わる微小領域の同定、2)味蕾幹細胞の維持に関わる特異的遺伝子群の検索、の2項目に重点を置いて研究を行なった。味蕾幹細胞の維持に関わる微小領域を同定するために、a)BrdU標識長期維持細胞(BrdU-LRCs)の標識条件とb)同定条件の最適化、および、c)局在領域の同定を行なった。BrdU長期標識を行なうためには、生後5日から1週間、1日2回BrdUを腹腔内注射により投与する方法によって下の上皮全てを標識することができた。ただし、新生児マウスにとってBrdUは毒性を示したので、BrdUの代替物として同様の標識が可能な5-ethynyl-2'-deoxyuridineを使用することを検討する必要がある。また、味蕾幹細胞の維持に関わる特異的遺伝子群の検索として、コンピュータ解析によって得られた候補遺伝子について、胎生期の組織の遺伝子発現に関するデータベースを用いてスクリーニングを行なった。この2次スクリーニングによって候補遺伝子をさらに選択し、抽出された味蕾幹細胞幹細胞維持関連遺伝子候補群の遺伝子発現の確認を今後行なう予定である。
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