研究課題/領域番号 |
22592069
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
坂井 詠子 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (10176612)
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研究分担者 |
筑波 隆幸 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (30264055)
岡元 邦彰 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (10311846)
西下 一久 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (20237697)
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キーワード | 破骨細胞 / ヘムオキシゲナーゼ1 / HMGB1 / カスパーゼ3 / 酸化ストレス |
研究概要 |
今年度は、鉄代謝における重要なヘム分解酵素であるヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)の細胞内発現レベルがカスパーゼ3の活性化とHMGB1の遊離に関与し破骨細胞分化を調節することを明らかにした。本研究成果を「Suppression of RANKL-dependen the me oxygenase-lis required for high mobility groupbox 1 release and osteoclastogenesis」としてJournal of Cellular Biochemistry 113(2),486-498 (2012)に発表した。この論文の中で明らかにした内容は、HO-1誘導作用をもつヘミンや生薬クルクミンが破骨細胞でもHO-1の発現を誘導するとともに破骨細胞分化を抑制し、細胞外へのHMGB1の遊離を抑制することを明らかにした。また、クルクミンでHO-1の発現を上昇させた時に、siRNAでHO-1の発現を抑制すると、細胞外へのHMGB1の遊離が促進し、破骨細胞分化も促進することを明らかにした。破骨細胞分化誘導因子であるRANKLはHO-1の発現を抑制するが、細胞内カスパーゼ3の活性化と細胞外へのHMGB1の遊離を促進した。HMGB1は死細胞から細胞外へ放出されることが知られているが、我々は破骨細胞においてスタウロスポリンを用いてカスパーゼ3の活性化が生じるときにHMGB1の遊離が増加することを明らかにした。またsiRNAでHO-1の発現を抑えるとカスパーゼ3が活性化し、細胞外のHMGB1量が増すことを明らかにした。また、HO-1発現ベクターを破骨細胞前駆細胞に導入しHO-1の発現を上昇させるとカスパーゼ3の活性化は抑えられ、HMGB1の細胞外への遊離や破骨細胞分化も抑えられた。活性酸素消去剤であるNACはカスパーゼ3の活性化を抑え、HMGB1の細胞外への遊離と破骨細胞分化を抑制した。以上の結果より、RANKLはHO-1の発現を抑えることで細胞内酸化ストレスを増しカスパーゼ3の活性化とHMGB1の遊離が促進し破骨細胞分化が促進されると考えられた。この結果は鉄代謝と酸化ストレスが破骨細胞分化を調節することを示唆している。そこで鉄代謝レベルの異なる系統のマウスにおける破骨細胞分化の違いを詳細に調べ、またHO-1の発現誘導作用のある化合物による破骨細胞分化への影響を調べ2報の論文に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
破骨細胞前駆細胞であるRAWD細胞を用いてROSの検出が可能になったこと、とHO-1発現ベクターを導入することが可能になったことや、3報告の論文に研究成果を発表できたこと、および現在さらにHO-1と破骨細胞分化に関する3報の論文を投稿中であることなどが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
HO-1の発現を誘導する化合物による破骨細胞分化調節機構をもっと明らかにしたいと考えている。 また、鉄代謝と酸化ストレスの両方に関与している分子による破骨細胞分化調節機構に関しての研究をさらに進展させたいと考えている。
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