研究概要 |
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は化膿性疾患,肺炎,腸炎,食中毒などの疾患を引き起こす病原性細菌で,主要な院内感染原因菌でもある.一方,本菌は健康成人の口腔内にも分布することから,他の口腔細菌や宿主組織と相互作用し,その病原性を発揮するものと考えられる.細菌由来プロテアーゼは宿主防御分子を修飾し組織障害を引き起こすが,大量精製が困難なことから酵素活性化のプロセスやその産生条件,及び各々のプロテアーゼが病原性を発揮する分子メカニズムなどの詳細は不明である.そこで本研究では,我々が確立したS.aureusグルタミン酸(Glu)特異的V8プロテアーゼ(GluV8)自己消化抑制分子改変による大腸菌発現系を用いて,GluV8ファミリープロテアニゼ,Glu分解活性を有する表皮剥奪毒素(ETA),及び口腔細菌由来GlU特異的プロテアーゼの組換え体の発現と精製を試み,種々の検討を行い以下の結果を得た. ・Glu特異的プロテアーゼファミリーの活性化過程とプロセシングの普遍性 Enterococcus faecalis及び4種のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌由来酵素を含むGluV8ファミリープロテアーゼの大量発現精製が可能になった.これらのプロテアーゼは,(i)25-40残基のプロ配列を持ち,いずれの分子においても活性化に先だってN末端プロ配列内部での段階的な加水分解が起こること,(ii)このプロ配列短縮によりメタロプロテアーゼによる活性型への最終転換(Xa_<-1>-Val_1間の加水分解)が著しく促進される共通の活性化機構が存在することを明らかにした.さらに,歯周病原性細菌由来のアスパラギン酸/グルタミン酸特異的ジペプチジルペプチダ」ゼ(DPP11)遺伝子を単離し,DPP11の性状と酵素活性を明らかにすると共に,本酵素ではN末端の短縮なしに活性型酵素となる可能性を示唆した.
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今後の研究の推進方策 |
DPP11の認識配列とその他の酵素との比較検討はほぼ終了し,雑誌論文作成中である.また,DPP, ETAの酵素活性と病原性の関連に関する知見を得ており,研究計画通りに検討を実施する予定である.
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