研究概要 |
唾液腺細胞内でイノシトール1,4,5三リン酸受容体(IP_3R)は管腔側に局在し、これを介した細胞内カルシウムイオン(Ca^<2+>)プールからのCa^<2+>動員は唾液分泌において必須である。しかし現在の所、「なぜIP_3Rが特異な細胞内局在を示すのか」という根本的な疑問に対する研究にまでは至っていない。我々はこれまでにIP_3R type 2(IP_3R2)がDT40細胞内のある局所に集中局在することを発見した。そこで今回、我々は研究課題名を「IP_3R2の細胞内局在に関する分子メカニズムの解明」とし、DT40細胞をモデル系として、IP_3R2が小胞体に組み込まれた後、ある別の分子がIP_3R2特異的に結合し、IP_3R2をある特定の小胞体部位に集中局在させているとの仮説をたて、この分子の同定を試みた。そこでまず今年度は、野生型IP_3R2を発現しているDT40細胞にのみ認められたIRAGの集中局在が、IRAGとIP_3R2との特異的結合によるものであることをより確実にするために、IP_3R2分子内におけるIRAG結合領域の同定を試みた。IP_3R2分子を構成する5つのサブユニット構造をmycタグ融合型分子としてクローニングし、GFP融合型IRAGとともにCOS-7細胞に共発現させ、抗GFP抗体を用いた免疫沈降法にてIRAGと特異的に結合するサブユニット構造の同定を試みた。その結果、IRAG分子はIP_3R2分子内のN末端から3番目のサブユニット分子と免疫沈降されてきた。さらに、同定したサブユニット分子のC末端側より段階的に欠失させたさまざまな欠失変異体をクローニングし、同様の免疫沈降法を用いて、より小さな結合領域の探索を試みた。その結果、IP_3R2分子内の1542番目のアラニンから1561番目のロイシンに挟まれた領域がIRAG分子との結合に重要である事が示唆された。
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