研究課題
選択的β2アドレナリン受容体作動薬の代表薬であるtulobuterolは、気管支拡張作用を有し、気管支喘息治療薬として用いられている。近年、交感神経系を介した骨代謝調節機構の存在が報告されているが、骨格筋と同様の機序であるのか否か、その詳細は明らかではない。そこで本研究では、RANKL遺伝子を導入した骨髄間質細胞株ST2-T細胞と骨髄細胞による共存培養を用いた。β2作動薬の光学異性体(+)(-)(±)をST-2T細胞に添加する破骨細胞形成系を確立した。RT-PCR法およびWB法により、骨髄問質細胞および骨芽細胞でβ2アドレナリン受容体の発現が確認された。ところが、血管平滑筋弛緩作用を持たない(+)体tulobuterolが最も強く破骨細胞形成を促進した。また、β2アドレナリン受容体拮抗薬であるbutoxamineにより、各種tulobuterolによる破骨細胞形成は阻害された。一方、骨髄細胞単独培養系に各tulobuterolを添加しても、破骨細胞は形成されなかった。さらに(+)tulobuterol添加によりST2-T細胞におけるreceptor activator of NF-kB ligand(RANKL)mRNAの発現亢進よびcyclic adenosine 3'5'-monophosphate (cAMP)が最も強く上昇した。(+)体選択的β2アドレナリン受容体作動薬による破骨細胞形成には、骨格筋同様にcAMP伝達系が関与していることが推察された。以上の結果から、筋への作用を持たない(+)体tulobuterolが骨芽細胞のβ2アドレナリン受容体を介して、RANKL発現を亢進させ破骨細胞へと分化させることが明らかになった。
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