研究課題/領域番号 |
22592078
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
柴田 恭子 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (90133438)
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キーワード | 歯周病 / P.gingivalis / ゲノムプロジェクト / プロテアーゼ / マイナー線毛 / 抗体 |
研究概要 |
歯周病原菌Porphyromonas gingivalisは、線毛(fimA)の型により□~□型に分類されている。日本人の歯周炎患者から分離されるP.gingivalisにはII型が多いという報告から、II型TDC60株のゲノムプロジェクトを開始していたが、本年度、全遺伝子配列解析が終了し、NCBI databaseにて公開した。一方、免疫療法開発のための新規標的分子の探索を目的とし、TDC60株に特異的に発現する分子の探索と解析を昨年度に続けて行った。本菌株に特異的に発現している分子として、すでにゲノム解析の終了しているW83株、ATCC33277株と比較し、TDC60においてのみ存在する遺伝子、或は他株と比べた時に発現変動が大きい遺伝子について優先的にクローニングを行った。タンパク質発現の比較は、二次元電気泳動を行って比較解析し、MALTI-TOF-MSにて同定した。TDC60で発現が増大しているマイナー線毛分子Mfa1、コラーゲン代謝に関わるDap2,aminoacyl-histidine dipeptidase(PepD-2)についてクローニングを行った。ATCC33277株にて、マイナーな短線毛と呼ばれるMfa1は、TDC60株では発現量が多く、決してマイナーではないことを明らかにした。病原性との関連性が示唆される。TDC60株のII型rFimAとrMfa1分子を抗原としてリコンビナント抗体ScFvの作製に着手した。TDC60株で発現量の多いとされるPepD-2は、Alaに特異性を示すアミノペプチダーゼでありながら、遷移金属イオン存在下、carnosine(β-alanylhistidine)を基質とし、β-alanineとL-histidineへの代謝活性を有していたことから、生体のヒスチジン含有ペプチド代謝に影響を及ぼす可能性が証明した。大量にリコンビナント標品を精製し、立休構造解析を行っている。他の病原性細菌のもつ本酵素との違いを明らかにする目的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度、TDC60株のゲノムプロジェクトが終了したことによって、P.gingivalisのゲノムは、相当数の組み替え、移動があることが明らかになった。すなわち、TDC60株のゲノムの解読は困難を極めた。当初予定していた比較ゲノムに基づく「新規病原因子の探索」は来年度の仮題となる点において、やや遅れていると言わざるを得ない。しかし、比較ゲノムとは別に、平行して行っていた、発現タンパク質の解析、治療をめざしたリコンビナント抗体の作製については、おおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、TDC60株のゲノムプロジェクトが終了したことによって、P.gingivalisのゲノムは、相当数の組み替え、移動があることが明らかになった。これらを踏まえ、ゲノムの構造と発現タンパク質の関係を推考する。一方、新規病原因子候補分子の大量精製を行い、タンパク質構造からの解析を目指す。本年度は、クローニング、精製、構造解析と準備を進める。多くの分子は、単量体で存在している訳ではなく、ホモあるいはヘテロ構造で機能分子となることから、解析した構造から機能解析を進める。すでに立体構造を解析したHBP35分子については、多量体構造をとるメカニズムを明らかにする。さらに、PepDの構造解析をまって、他の病原細菌のもつPepDとの違い(遷移金属元素での活性化)の機構と意味を明らかにする。
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