咀嚼時に生じる顎運動と頭部運動の中枢性制御機構を解明するため、まずラットをウレタンで麻酔し、硬口蓋の機械刺激により、リズミックな顎運動を誘発させた。この時、顎運動ならびに咬筋と顎二腹筋前腹から筋電図を記録した。そして顎運動中に、顎運動と頭部運動の制御に関係していると考えられる前庭神経核ニューロンからの細胞外記録を行い、ニューロン活動にどのような変調が見られるか検索し、以下のことが明らかとなった。1、リズムが遅く大きな側方運動を伴うものと、リズムが速く単純な開閉口運動からからなるものの2種類のリズミックな顎運動が誘発された。2、内側前庭神経、外側前庭神経核、上前庭神経核と下前庭神経核から、2種類の顎運動中、発火頻度が増加または減少するニューロンが記録された。3、2種類の顎運動中、発火頻度が増加するニューロンは減少するニューロンより、内側前庭神経、外側前庭神経核、上前庭神経核で多く記録された。一方、発火頻度が減少するニューロンは、下前庭神経核で最も多く記録された。4、顎運動中、変調したニューロンは前庭神経核内に混在していた。5、発火頻度の変化と顎運動の相(開口相と閉口相)の間に関係はなかった。6、変調したニューロンの発火頻度は、受動的な開口や硬口蓋・咬筋・側頭筋の圧刺激に対し変化しなかった。これらのことから、前庭神経核は顎運動の調節に関与していることが示唆された。
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