本研究では第1に前庭神経核刺激により、リズミックな顎運動と頸筋活動が変調するか実験を行った。リズミックな顎運動は顎顔面運動野の連続電気刺激により誘発した。板状筋筋電図は開口相の間もしくは開口相から閉口相へ移行する間にリズミックな群発活動を示した。しかしながら、胸鎖乳突筋筋電図はリズミックな顎運動中に群発活動は示さなかった。閉口相での内側前庭神経核刺激は、閉口運動の振幅を増加させ、胸鎖乳突筋筋電図に群発活動を誘発し、板状筋筋電図活動の持続時間を増加させた。開口相での内側前庭神経核刺激は、顎運動のリズムを妨げ、小さな閉口運動、胸鎖乳突筋筋電図の群発活動と板状筋筋電図活動の抑制期間を誘発した。開口相での外側前庭神経核刺激や上前庭神経核刺激は、開口運動の振幅を増加させた。閉口相での下前庭神経核刺激は閉口運動の振幅を減少させ、開口相での下前庭神経核刺激は開口運動の振幅を減少させた。これらの結果は前庭神経核がリズミックな顎運動と頸筋活動の変調に関与していることを意味する。次にリズミックな顎運動中の前庭神経核ニューロン活動を検索した。リズミックな顎運動は口蓋粘膜の機械刺激により誘発した。リズミックな顎運動中、約25%の前庭神経核ニューロンは発火頻度が増加し、10%の前庭神経核ニューロンは発火頻度が減少した。発火頻度の変化と顎運動の相(開口相と閉口相)との間に相関はなかった。これらの結果は前庭神経核ニューロンが顎運動の制御に関与していることを示唆している。
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