緑茶カテキンの1つであるepigallocatechin gallate (EGCG)を飲用水に溶解して、自己免疫疾患モデルマウスであるMRL/lprマウスに8週齢~16週齢にかけて1日・1匹平均592μgの割合で57日間に渡って投与した。EGCG投与後に、EGCG投与マウス10匹と非投与マウス6匹から顎下腺を摘出して、自己免疫唾液腺炎における、アポトーシス促進因子のBaxと阻害因子のBcl-2の発現についてストレプトアビジンービオチン法によって免疫組織化学的に調べたところ、EGCG投与マウスの顎下腺組織では、非投与マウスに比較して、Bcl-2の発現が導管上皮細胞において顕著であり、逆にBaxの発現が抑制されていた。また、免疫組織化学的局在について、0~3の4段階(0:染色が認められない。1:染色が無視できるくらいに非常に弱い。2:中等度の染色が、導管上皮細胞に部分的に認められる。3:顕著な染色が導管上皮のほとんどの細胞に認められる。)のスコアで評価し、このスコアに関してEGCG投与マウスと非投与マウス間で発現の割合を比較したところ、両群間に有意差を認めた。また、Kendall順位相関係数を、唾液腺炎の重症度(0~3:0:正常組織である。 1:炎症性細胞浸潤がみられるが、組織の破壊像は認められない。 2:炎症性細胞浸潤と顕著な組織破壊像が認められる。 3:2に加えて、肉芽腫様あるいは線維症様病変が認められる。)とBaxならびにBcl-2のそれぞれの免疫組織化学的染色スコア間で算出したところ、Baxとの間では有意な正の相関が、Bcl-2との間では有意な負の相関が認められた。以上のことから、EGCGは、Baxの発現を抑え、逆にBcl-2の発現を促進することによってアポトーシスの進行を阻害し、自己免疫唾液腺炎における組織損傷を抑制していることが考えられた。
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