シェーグレン症候群患者唾液中には、炎症性サイトカインが健常者より有為に多く含まれていることが知られている。また、唾液腺組織へのリンパ球浸潤が観察されることから、炎症性サイトカインは同症候群の進行および症状と密接な関連があると考えられる。今年度はこの点に着目して、酸化ストレス条件下で分泌される炎症性サイトカインによって唾液腺が受ける影響をヒト顎下腺由来A-253細胞を用いて解析し、その影響を緩和する分子を探索した。 マイクロアレイを用いた解析から、酸化ストレス条件下で炎症性サイトカインIL-17の受容体であるIL-17RAの発現量が増加していることが観察された。シェーグレン症候群患者の組織染色からIL-17受容体が健常者より増加していることが報告されており、酸化ストレスの影響が考えられる。シェーグレン症候群患者の唾液中IL-17含量も増加していることから、その作用の増強が推測される。また、A-253細胞にIL-17を作用させるとIL-6やCXCL-1等の分泌量増加が観察されたことから、唾液腺組織内で炎症の連鎖がおこっていることが示唆された。 サイトカイン受容体の中には内因性の阻害分子として可溶型受容体を発現しているものがあり、IL-17RAと複合体を形成して働くIL-17RCおよびIL-17RB受容体の可溶型が産生されることが知られているが、IL-17RAについては不明であった。そこでIL-17RAについて探索したところ、選択的スプライシングによって産生される可溶化型IL-17RA受容体の存在を明らかにすることができた。ヒトでは可溶化型IL-17RAは唾液腺を含む広範な組織で発現していることが確認された。内因性の抗炎症分子としての機能が期待される。
|