慢性炎症性の自己免疫疾患のひとつシェーグレン症候群は、主として唾液腺と涙腺が障害されるため口腔乾燥と乾燥眼をきたす。本研究では、唾液腺における酸化ストレスの制御機構を明らかにするため、酸化ストレスの影響をヒト顎下腺由来A-253細胞を用いて解析した。ヒト全ゲノム発現解析の結果から、A-253細胞でH2O2存在下では炎症性サイトカインの発現が亢進していた。一方で、抗炎症性サイトカインであるIL-11も誘導されていた。これは、標的組織自体が局所の炎症を制御する機能を有することを示唆している。またIL-11は補充療法の候補分子だと考えられる。さらに、ヒト唾液腺から可溶性IL-17受容体(IL-17RA)の同定に成功した。IL-17はシェーグレン症候群、慢性関節リウマチおよび炎症性大腸炎クローン病などの炎症性疾患において重要な分子とみなされており、可溶性IL-17RAは内因性のIL-17阻害物質となり得る。
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