研究課題
腫瘍細胞の増殖とそれに伴って起こるべき血管新生との間のアンバランスによって生じた低酸素領域(hypoxic area)は、腫瘍の悪性度や遠隔器官への転移を助長し、このため患者の予後を大きく左右しかねない要素だとされる。しかしこのhypoxic areaを早期にそして的確に診断する手立ては非常に限られている。本研究では、いわゆるmetabolic hypoxiaとよばれる現象に伴って生じるATP生産の変動による、ATP代謝の変化をMRスペクトロスコピーにて、さらにhypoxiaに伴う細胞自体の変化を拡散強調MR画像にて解析することで悪性腫瘍内部のhypoxic areaを早期にかつ正確に捉えるシステムを確立することを目的としている。腫瘍内部のhypoxic areaを探知するにあたり、hypoxic areaで生じるATP代謝異常と細胞膜の変化に注目した。すなわち、hypoxiaに伴うATP代謝異常は31P-MRスペクトロスコピーにて、また細胞膜におこる変化のうち膜の脱分極ならびに細胞浮腫は拡散強調MR画像にて解析、画像化することができると考えた。本年度は、1)ヌードマウスを使ってヒト扁平上皮癌モデルの確立と31P-MRスペクトロスコピーおよび拡散強調MRイメージングを用いたhypoxia検出技術の策定を目標に研究をすすめる予定であった。しかし、課題の中途採択により研究期間が十分ではなかったため、成果を得るに至っていない。よって、引き続き平成23年度にかけてhypoxia検出技術の策定を目指す予定である。