研究概要 |
頭頸部放射線治療を行なうにあたり、最大の難関は口腔粘膜障害である。放射線の細胞内標的はDNAであり、DNA2重鎖切断が増殖死、間期死をひきおこす。その他、1972年にKerrはアポトーシスおよびネクローシスの概念を打ち出した。我々は放射線照射によりミトコンドリアから活性酸素が産生され、アポトーシスがおこることを示した(Motoori et al.,2001)。本研究では、放射線照射による上記[増殖死]と[アポトーシス]がどのような割合でおこるかを明らかにし、また、[アポトーシス]を抑制する内因性酸化ストレス抑制療法の確立を行なう事を目的として研究を始めた。本年度では、次のことを行なった。1)まず、18.8Gy1回照射に対する細胞のROS発現、脂質過酸化発現(HNE)、アポトーシスを調べた。2)Vitamin Eの抑制効果を調べた。照射前および照射後のVitamin E投与で、ROS、HNE、およびアポトーシスが抑制された。特筆すべきは、照射後のVitamin E投与で、ROS、HNE、およびアポトーシスが抑制されたことである。3)SCC61細胞に、MnSOD遺伝子、CoQ3遺伝子の導入された細胞株、及びRNAiによりp53遺伝子を抑制したp53RNAi細胞株を確立した。4)細胞に、0.1,0.5,1.0,5Gyを照射し、ミトコンドリアDNA(mtDNA)のコピー数の変化を調べたところ、照射後3日時点のmtDNAコピー数の増加が見られた。今後、分割照射での実験、アポトーシス以外の死の関与を明らかにする。以上、研究は順調に行なわれた。
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