研究課題/領域番号 |
22592097
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小林 美智代 北海道大学, 創成研究機構, 特任助教 (80316265)
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研究分担者 |
千葉 逸朗 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (50250460)
磯貝 恵美子 東北大学, 農学研究科, 教授 (80113570)
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キーワード | オステオプロテゲリン / トロンビン / 炎症性サイトカイン / 血管内皮細胞 |
研究概要 |
【目的】破骨細胞活性化抑制因子であるオステオプロテゲリン(OPG)は、動脈硬化や心疾患によりその血中濃度が上昇することが報告されている。我々は炎症存在下での血管とOPGの作用メカニズムを明らかにする目的で、血液凝固因子で炎症メディエーターでもあるトロンビンが、血管内皮細胞からのOPG産生に及ぼす作用について検討を行った。 【方法】ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HMVEC)にトロンビンを添加し、18時間培養を行った。必要に応じてSrcキナーゼの阻害剤であるPP1およびERKの阻害剤であるUOI26、PI3K阻害剤であるLY294002、PAR-1の阻害剤であるSCH79797でHMVECを30分間前処理行った後に、トロンビン共存下で培養した。培養上清中のOPG濃度はELISAにて測定した。さらに、OPGを囮レセプターとするRANKLとの相互作用を調べるために、HMVECをRANKL抗体で一時間前処理を行った後に、トロンビン共存下で培養し、炎症性サイトカインであるIL-6およびIL-8の産生をELISAにて測定した。 【結果および考察】トロンビンは濃度依存的に、HMVECからOPG産生を誘導した。LY294002、PP1およびSCH79797はトロンビンによるOPG産生を抑制した。しかし、UO126はトロンビンによるOPG産生誘導に影響を及ぼさなかった。また、トロンビンはHMVECからIL-6およびIL-8の産生を誘導した。RANKL抗体およびOPGをHMVECと前培養した後トロンビンにて刺激したところ、RANKL抗体およびOPGはIL-8の産生に影響を与えなかったが、IL-6の産生を濃度依存的に抑制した。 【結論】本実験結果より、OPGの血中濃度上昇においてトロンビンが関与しており、その情報伝達経路にはPAR-1、SrcおよびPI3Kの活性が関与することが示峻された。さらに、OPGはトロンビンによる血管内皮細胞からのIL-6の上昇を抑制し、局所における炎症反応を制御している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血管内皮細胞におけるトロンビン刺激において、OPG産生メカニズムやその役割、およびRANKLとの関係が解明しつつあるから
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今後の研究の推進方策 |
siRNA干渉を利用したOPG、RANKLまたはTRAIL欠損ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HMVEC)の作成と炎症性サイトカインの発現動態の解明、およびトロンビン刺激によるOPG産生と産生されたOPGの局在の解明をOPGの免疫染色および共焦点レーザー顕微鏡、同位体顕微鏡を用いて解析する。
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