研究課題/領域番号 |
22592098
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
佐塚 泰之 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (90162403)
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研究分担者 |
杉山 育美 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (80509050)
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キーワード | 癌 / ナノバイオ / リンパ / DDS |
研究概要 |
2010年度は、制癌剤シスプラチンを内封したリポソームの粒子径を800nmとすることにより、舌への投与24時間後においても舌およびリンパ節にシスプラチンが残存し、舌がんの治療及び予防効果を有する製剤となることが期待される結果が得られた。しかしながら、リポソームが投与部位にて初期バーストすることによる舌の正常細胞に対する細胞毒性が惹起されるという問題点が浮上した。本研究目的のひとつに、水溶液投与では得られない長時間の薬物保持があるが、これは正常細胞への毒性回避をも考慮したものである。 そこで、2011年度は初期バーストのない、長時間の薬物保持リポソームの組成を確立することに遭進した。これは、研究実施計画中のフィードバックにあたる。これまで、申請者らはシスプラチンの内封量と粒子径に着目しバンガム法もしくは凍結融解法の2種類の調製方法を実施してきた。しかしながら、強固な膜を有するリポソームを調製するためには脂質組成や、形態を再考する必要があった。まず、イオン結合により薬物を内封させたリポソームをさらに脂質2重膜で覆うwrapped liposomeの調製を試みた。しかしながら、シスプラチンと脂質とのイオン結合が弱くシスプラチンの放出を制御するには至らなかった。次に、リポソームの構成脂質を検討した。構成脂質としてコレステロールを添加することにより未添加時に比べて膜の流動性が低くなるとの報告があったため、最適なコレステロール添加量を検討した。その結果、総脂質量に対して55%のコレステロールを添加することが最も強固な膜を形成し、長時間の薬物保持が可能となることが予想される結果が得られた。このリポソームについて詳細な検討を実施し、in vitroの後にin vivoでその有用性を評価する考えである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的として挙げた4項目((1)CPLのリンパ節流入評価(2)CPLの製剤学的特性の検討(3)CPL中のシスプラチンの局在解明と最適化(4)リンパ節転移抑制効果の検討)のうち、(2)まではほぼ達成している。2011年度に検討したリポソームがin vitroで良好なデータを出すと予想しており、今後も遅れることはないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
シスプラチンの定量はParticle Induced X-ray Emission(PIXE)にて行うこととしていた。しかしながら、本学におけるPIXEの使用頻度が高く研究がスムーズに遂行できないこと、さらに検出対象であるシスプラチンが微量であるため、定性はできているが正確に定量できているか不明なことが問題点であると考えている。計画当初はシスプラチンの組織分布を定量することにより有用性評価を行う予定であったが、このままでは研究実施期間中に検討を終えることができないことが懸念される。そこで、十分なin vitro検討をした後にin vivoにて抗腫瘍効果および抗転移効果を検討することで対応したいと考えている。
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