研究課題/領域番号 |
22592099
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研究機関 | 東北福祉大学 |
研究代表者 |
杉本 是明 東北福祉大学, 総合福祉学部, 教授 (30361158)
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キーワード | 再生医療 / ナノバイオ / 肥満細胞 |
研究概要 |
今年度は、Honeycomb film(HCF)の基盤を強くして、溶液中で押さえなくても浮かないようなHCF(PET film支持体のポリスチレン製HCF)を作製し、実験を進めた。3・5・10μmの3次元孔を持つHCF上で、NCL-2肥満細胞(腫瘍細胞でない肥満細胞株)を培養し生育状況を観察したところ、孔のないflat filmに比べて、10μm HCF上では、細胞は増殖し、小さくなることが観察された。また、3・5μm HCF上では、細胞数や大きさに変化ないものの、HCFに沿ってNCL-2肥満細胞が突起を伸ばし、細胞分裂をおこすという特異な形態が観察された。DAPI核染色により明らかに細胞は分裂しており、HCFと接触することで細胞分裂が促進されることが判明した。 また、肥満細胞から分泌される顯粒物質について、ヒスタミンやインターロイキンなどの分泌量を、NCL-2とRat Basophile Leukemia(RBL)(好塩基性のラット白血病細胞で、肥満細胞に特徴が類似)の培養細胞を用いて、細胞外マトリックスであるHCFの孔の違いによる影響を検討したところ、ヒスタミンとインターロイキンの分泌量は、HCFの孔の大きさと、NCL-2とRBLの細胞の違いにより分泌に相違があることがわかった。 一方、心身症との関連で捕らえると、肥満細胞は痛みなどの身体的・機械的ストレッサーのみならず、心理・情動的なストレッサーによっても活性化し、アレルギーや炎症性疾患、胃潰瘍などを悪化させることが知られている。培養細胞だけでなく、in vivoの肥満細胞を使って実験することも次の段階で必要になり、in vitroのNCL-2肥満細胞との比較実験が意味を成してくる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NCL-2肥満細胞をHoneycomb Film(HCF)上で培養することに成功し、HCFの孔径を種々変えることで、その形態の特徴、増殖細胞数、増殖細胞の大きさなどが変化するという新しい知見を発見し、現在、国際学術雑誌に投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
なぜHoneycomb Filmという細胞外マトリックスを使うと、肥満細胞の形態と増殖が変化するのか、細胞内メカニズムを分子レベルで検討しなければならない。肥満細胞の分裂細胞周期が早まっている可能性もある。肥満細胞に特異的な接着因子、顆粒分泌を制御する蛋白質、さらに、細胞周期を精査するための実験が必要になる。 問題点としては、対照実験に用いるFlat filmが電子顕微鏡で見たところ、実はflatではなく、1~2μmの凹凸があることが判明した。これは接着している細胞に影響する恐れがあり、業者に再度作成してもらい、これから再実験しなければならない。今後、実験計画が遅れることが予想される。
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