研究課題/領域番号 |
22592106
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
三輪 邦弘 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (10136509)
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研究分担者 |
香川 豊宏 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (00258592)
木原 由香 福岡歯科大学, 歯学部, その他 (20425309)
湯浅 賢治 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (40136510)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 定量的医用画像解析 / 組織性状診断 / 超音波画像 |
研究概要 |
頸部腫瘤性病変に対する超音波像の定性的診断所見が意図する内容を画素構築像としてパターン化された定量値で置き換える手法を考案することができた. 形状の複雑度を対数化した独自の算出式から得られた健常な組織構築像の定性的所見(均一, 不均一, 粗雑, 繊細など)を示す指標を特徴量として数値化することができた. これらの数値を腫瘤像の各様態所見(辺縁, 内部, 境界周辺部)の表記用語を分別集約し, 定性的用語に対する指標特徴量との関係を見いだした. 頻用される定性的用語が健常組織で使用される場合と病変組織で使用される場合で定性所見用語に対する特徴量の関係の違いを比較した. 同一の定性用語では健常組織で使用される場合には評価する対象域の大小に関わらず特徴量の標準偏差が非常に小さかった.一方, 病変組織で使用される場合には対象域の増大とともに, 特徴量の標準偏差も増大した.病変の大きさが視覚認識に大きな影響を与えることが確認された. 次に腫瘤性病変のB-mode(白黒階調)像に重複させたDoppler modeによる腫瘤内外の血流分布を樹枝状に連結する画素パターンで定量的に分類する手法を見出すことを目的とした.その前段階として画素連結パターンを評価する血流像の選択法として, 周波数を変えたDoppler動画像を利用した血管拍動による血流像の特性を把握した. その結果, Doppler周波数の上昇によって血流像の連続性が低下したが, 血流分布の構築性は上昇した. 血管拍動の拡張期で血流像の連続性が上昇した. 皮下脂肪層幅の厚みによる腫瘤中心の位置が深くなると, 血流像の連続性と構築性が低下した. これらのDoppler血流像の特徴から, 腫瘤性病変の血流分布の評価基準を決定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1, 頸部腫瘤性病変に対する超音波像の定性的診断所見が意図する内容を画素構築像としてパターン化された定量値で置き換える手法を考案することができた. 2, 形状の複雑度を対数化した独自の算出式から得られた健常な組織構築像の定性的所見(均一, 不均一, 粗雑, 繊細など)を示す指標を数値化することができた. 3, これを追認するためにMRI, CTなどの医用画像で使用される所見と照合して, 定性的に認識されて使用される診断用語に共通する画素構築像の特異値を導きだすことができた. 例えば,「均一」を示す特異値の最頻値を「真の均一値」とし, その変動値による定性表現の曖昧さを示す形容詞(「やや」, 「ほぼ」,「一部」など)の出現頻度との関連性を求めた. これらの用語を連結した表現(「やや・均一」「ほぼ・均一」など)を示す数値を「健常所見特徴量」とした. 4, この特徴量を健常臓器に対する画像所見の共通したコンセンサスを示す数値として決定することによって, 画像診断医の読像経験の深浅によるパターン認識の違いや個人的な認識の偏りを数値として基準化することが可能となった. 5,「異常なし」を前提にした健常臓器の画像所見を一つの特徴量として定量化することは, この概念が病変という健常域から逸脱した画像構築を定量化する大前提であり,今年度に達成することができた.
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今後の研究の推進方策 |
1, 頸部腫瘤性病変を嚢胞性,炎症性,腫瘍性に分類し, それぞれの超音波画像(B-mode, Doppler mode)の定性的画像所見に記載された内部性状を表す用語(単語)を病変性状別に列挙し, その使用頻度と性状との合致率を比較する.所見として定性的に表された用語とそれを示す超音波像の読像指標(B-mode像の境界辺縁部・内部性状・周辺部, Doppler mode像の血流信号の占有域・分布パターン)を詳細に照合し, 用語が意図する部位の超音波像を視覚的にほぼ同等と認識できる最適階調で輝度階調処理する.画像処理された各病変の超音波像を読像指標別に独自に考案した数式を用いて画素複雑度の特徴量を算出する. 2, マクロ病理組織像をデジタル化して, 物理的特性(充実部・液状部)と病的特性(繊維化・角質化・異型化など)の分布を色分けする.超音波像の病変域(辺縁・内部性状・血流など)を描画する濃淡階調分布(32階調)と色分けされた病理特性域を照合し, 各階調域に一致する病理特性域を決定する. 3, 超音波像の病変読像指標を定量化した複雑度と病理特性域を比較し, 数値化された指標と病態との関係を決定する. 4, 超音波像を利用した定性的画像所見を複雑度という指標を応用数値化(定量化)して, その数値がどのような病態特性を示すかという一連の定量診断手法をプログラム化する. これを「超音波画像定量診断システム」とする. 5, このシステムを本研究課題の成果として学術集会と論文で発表する.
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