研究概要 |
光重合型コンポジットレジンの重合にはラジカル重合が利用されている.多くは感光材のカンファーキノン(CQ)と3級アミン(DMAEM)によりラジカルを発生させている.そして,これらによって発生するラジカルが細胞内の代謝に影響を与えることが申請者らの研究で示唆された.そこで、本年度は白金ナノコロイドによってラジカルが除去できるかを検討してみた. ヒト単球系細胞THP-1細胞に0.5mMのDMAEMと0.4mMのCQを添加し光照射40秒によりラジカルを発生させた.ラジカル発生時に白金ナノコロイドを0-20ppmで存在させ.細胞の代謝活性に与える影響を細胞内ミトコンドリア活性,細胞内GSH濃度を0,6,24時間後に測定することで評価した. 白金のコロイド単独では細胞内代謝に大きな影響を与えることはなかった.ラジカル発生条件下では,細胞内代謝は顕著に低下した事から、ラジカルは細胞内に侵入し細胞内の代謝経路を阻害していることが示唆された.白金ナノコロイドとラジカルの両方が存在する条件では,細胞内代謝およびGSH濃度が低下する傾向が認められ,ラジカルに対し白金ナノコロイドが何らかの影響を与えていることが示唆されたが,直接的にラジカルを補足しているという結論は得られなかった. しかしながら,白金コロイドが存在するとラジカルの細胞内代謝抑制効果が低減される傾向が認められたことから,CQとDMAEMEMにより発生するラジカルの細胞酸化ストレスの緩和に利用できる可能性が示唆された.
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