研究課題/領域番号 |
22592109
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
井上 哲 北海道大学, 大学病院, 講師 (80184745)
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キーワード | 1ステップ型接着システム / 臨床的スミア層 / 接着性能 |
研究概要 |
H23年度は、各種1ステップ接着システムの微小引張り接着強さ測定と、臨床的スミア層溶解能の透過型電子顕微鏡(TEM)による観察を行った。 1.接着強さの測定 健全ヒト抜去大臼歯歯冠部を水平に切断し、2種の臨床的スミア層を産生するためダイヤモンドポイント(レギュラー)および耐水研磨紙(#2000)を用いて、可及的平坦な2種の被着研削象牙質面を得た。この被着面に対し、Clearfil Tri-S Bond(S3)、Hybrid Coat II(HC)、Beauti Bond(BB)、BOND FORCE(BF)、Absolute2(AB)、およびG-BOND PLUS(GP)の接着システムを用いて、それぞれ指示書どおりに処理した後、通法に従い微小引張り試験を行った。その結果、S3ではレギュラー研削面に対する接着強さは約20MPaであったが、#2000研削面に対しては約40MPaと有意に高い値を示した。しかしその他のシステムでは、いずれも接着強さは約20-30MPaで、研削面間で有意差は認められなかった。これはS3の酸性度が他と比較し高いためと考えられた。 2.TEM観察 H22年度にスミア層の溶解能を検討するために表面をSEM観察した試料を用い、通法に従いTEM観察した。その結果、ABの#2000およびレギュラーいずれの研削面においても、蒸着したAg-Pd粒子層の下部にアパタイトが脱灰したコラーゲン線維網と思われる層が見られた。また象牙細管開口部は漏斗状に広がっていた。BBでは、レギュラー研削面の方がスミア層が残存していると思われる像が観察され、また細管中にはスミアプラグが認められた。一方S3では、いずれの面においてもスミア層の存在は認められず、更なる詳細な検討が必要と思われた。現在TEM観察は継続中であり、H24年度も引き続き行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究をの遂行に協力してもらっている大学院生が、まだ経験が少なく実験データのばらつきが大きいため、予定より多くの時間がかかっていることや、実験に必要な抜去歯の収集に手間取ったことが考えられる。今後は、実験手法にも慣れてきているため、比較的スムースに進行できると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、約半年間の長期にわたるサーマルサイクリング試験を岡山木学の設備を借りて行う予定であるので、連絡を密に取り合いながら行いたい。 また、今秋にフィンランドで開催される国際学会で研究発表を行う予定であり、その時の学会に参加予定の海外共同研究者との研究打ち合わせも同時に行ってくる予定である。
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