研究概要 |
根尖性歯周炎は根管内に生息する多種多様な細菌により惹起され、根管の機械的拡大と抗菌剤による洗浄消毒が治療の基本である。必要最小限の根管拡大で感染源を除去すれば患歯を長期保全できる。そのためには治療前後の根管内細菌叢を質的・量的に把握することが重要である。本研究の目的は、嫌気培養法と16SrRNA遺伝子を標的としたPCR法からなる根管内細菌検査を通じ、根尖性歯周炎における主たる病原性菌種を追究し、特異的抗菌療法を駆使し必要最小限の根管拡大で臨床症状を早期に解消できる合理的な治療プロトコールを確立することである。 根尖性歯周炎の治療を目的に東北大学病院を受診した患者からインフォームドコンセントを得て検索した。その結果、根管内細菌叢は症例により大きく異なり、同一個人でも治療歴や急性症状、口腔との交通の有無等により差のあることが判明した。治療前の細菌量logCFUは平均6.18(1.90~7.06)で、Olsenella,Mogibacterium,Pseudoramibacter,Propionibacterium,Parvimonas属の検出頻度が高かった。中でもOlsenella,とMogibacteriumは根尖部圧痛との関連が示唆され、今後、各種臨床症状と細菌種との相関を検証する必要を認めた。治療歴のない症例では、治療歴を有する症例に比べ根管内に存在する細菌の量とその種類が多い傾向にあった。肉眼的健康象牙質の出現を指標としNaOCl浴下で拡大後7~10日間Ca(OH)_2を根管貼薬すると、ほとんどの症例で嫌気培養結果は陰性となり、従来の標準プロトコールで根管内の感染はほぼ制御されることが判明した。
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