研究概要 |
根尖性歯周炎は根管内に生息する多種多様な細菌により惹起され、根管の機械的拡大と抗菌剤による洗浄消毒を柱とする菌非特異的アプローチが標準治療である。本研究の目的は、感染根管治療前後の根管内細菌叢を嫌気培養法と16S rRNA遺伝子を標的としたPCR法を通じて質的・量的に解析して根尖性歯周炎における主たる病原性菌種を追究し、チェアーサイドの根管内細菌検査結果に基づく特異的抗菌療法を駆使した合理的な治療プロトコールを確立することである。本年度は蛍光フィルターを利用した微生物迅速検査装置を根管内細菌検査に応用できないか、検討を重ねた。 根尖性歯周炎の治療を目的に東北大学病院歯周病科を受診した患者からインフォームドコンセントを得て、治療前、根管拡大後、抗菌剤貼薬後の根管壁象牙質を検索した。その結果、根管内細菌叢は症例により大きく異なり、治療前の根管壁象牙質からは、Olsenella, Mogibacterium, Pseudoramibacter, Propionibacterium, Parvimonasなどが高頻度で検出され、治療歴のない症例ほど根管内細菌の量と種類が多い傾向にあった。また打診痛など急性症状を有する根管は細菌量が多く、Olsenella, Mogibacterium, Parvimonasが頻出した。微生物迅速検査装置を用いると試料中の生菌が20分以内に計数可能で、しかも小型であるためチェアーサイドでの臨床検査として非常に有用であることが判明した。計数結果は嫌気培養で得られたCFU/mLの10~100倍で、1mL中の生菌数が1700個以下となると嫌気培養陰性となることも判明した。また、根管拡大後および抗菌剤貼薬後の試料は殆どの場合培養陰性であったが、Propionibacteriumは根管拡大後も検出されることが多かった。
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