研究概要 |
医薬用殺菌薬のクロルヘキシジンは、口腔粘膜への非侵襲的修復治療に一般に洗浄剤として用いられているが、さらにこのクロルヘキシジンは歯質接着性の長期耐久性劣化を遅延する働きが近年報告されている。劣化原因として象牙質基質から放出されるMMPs (Matrix Metalloproteinases)の存在が指摘されているが、クロルヘキシジンはMMP阻害剤として、歯科修復への使用が注目されている。これまでの研究から、象牙質削除後の歯面に30秒間塗布したものは、象牙質コラーゲンの劣化が抑制されることが、in vivo, in vitroの研究において近年報告されている。 我々は、長期効果的な薬剤の放出を考え、歯科接着材料そのものにクロルヘキシジンを付加する試みを行り、クロルヘキシジンの長期放出量、抗菌性を検討した。その結果3.0%と4.0%クロルヘキシジン含有のPMMAレジンセメントは5週間クロルヘキシジンの放出が見られたが、その量はサンプル片に含有させたクロルヘキシジンの1%(Wt)以下であり、99%以上は放出されなかった。2週間以上の長期抗菌性を考慮しクロルヘキシジンをPMMAレジンセメントに付加するためには、含有量は3%また4%必要であることが分かった。また、歯科接着剤の前処理剤にクロルヘキシジンを含有させた場合は、1%の含有量なら有効な抗菌作用が見られ、また接着性に影響が出ないことが分かった。 さらに、クロルヘキシジンがコラーゲンの崩壊を抑制する可能性から、う蝕の再石灰化、また進行抑制に有用な化合物であることを、牛歯根面象牙質を用いpH cycling法にて評価した。う蝕のメカニズムのそのひとつの可能性として有機質(コラーゲン)の崩壊によって齲蝕が進行するということが示唆されているが、コラーゲン保護の観点から、う蝕予防剤としてクロルヘキシジンの応用が示唆された。
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