象牙質接着界面のう蝕抵抗性は、修復物の二次う蝕を抑制し、修復物の寿命を向上させる上で重要である。本研究代表者は、接着界面のう蝕抵抗性について検討し、樹脂含浸層直下にう蝕抵抗層としてのAcid-base Resistant Zone(以下ABRZと略記)の存在について報告してきた。本研究の目的は、各種接着システムにおけるABRZの形成とナノリ―ケージとの関係について透過電子顕微鏡(TEM)観察を行い、その形態学的な関連性について解明することである。 実験にはヒト抜去臼歯を用い、歯冠を歯軸と垂直に切断して咬合面象牙質を露出した後、耐水研磨紙#600を用いて研削し、象牙質面を得た。その後、セルフエッチング系ボンディング材を業者指示に従って接着し、コンポジットレジンを築盛して接着試料とした。試料は、水中浸積後、接着界面に垂直に薄切し、50%アンモニア性硝酸銀溶液に24時間浸漬後、8時間蛍光灯下で現像して銀を析出させた。その後、試料の一方を#1500耐水研磨紙を用いて面出し後、Inoueらの方法(2006)に従って、人工脱灰液90秒間、さらに5%次亜塩素酸ナトリウム20分間処理した。その後、通法に従って、TEM試料を作製し、接着界面のTEM観察を行った。 その結果、すべてのセルフエッチング系ボンディングシステムにおいて接着界面にABRZの形成が確認された。一方、樹脂含浸層及びABRZの厚みはそれぞれ異なり、さらにナノリーケージの出現率もことなることが明らかになった。また、オールインワン接着システムにおいてはABRZ直下に漏斗状の耐酸性の低い構造の存在が明らかになった。
|