研究概要 |
血管新生作用や関節リウマチの発症・進行の抑制作用など様々な免疫調節機構に関与しているだけでなく,近年,抗菌作用があることも報告されているアドレノメデュリン(Adrenomedullin:以下,ADM)およびその関連ペプチドの抗菌効果を数種の口腔細菌を用いて検証するとともに,ADM発現形質転換株の作製を試みたところ,以下のような知見を得た。すなわち,1)総じてグラム陽性菌であるS.mutansおよびS.sobrinusに対しては,高濃度のADMを添加した場合に強い静菌作用が認められたが,低濃度(0.78μg/ml以下)においてはその作用が比較的弱かった。また,同じグラム陽性菌であるL.caseiに対しては,低濃度のADMにおいてもStreptococcusの2菌種より強い静菌作用を示した。一方,グラム陰性菌であるP.gingivalisの2菌種に対しては,いずれの濃度のADMにおいてもグラム陽性の3菌種と比較して,より強い静菌作用を示した。本研究で使用したADM(1-52)および関連ペプチド(ADM1-12,13-52,16-52および22-52)のうち,実験に供した全ての細菌に対し相対的に広範囲の濃度でより強い静菌作用を示したのはADM(13-52)およびADM(16-52)であった。2)GST融合蛋白発現用ベクターおよびコンピテントセル(E.coli BL21株)を用いて,ADM(1-52)ならびに抗菌効果が比較的高いADM(13-52)のクローニングならびにGST融合ADM蛋白の発現を試みたところ,大腸菌から精製した蛋白中にADM(1-52)およびADM(13-52)のアミノ酸配列が含まれていることが,ウェスタンブロットによって確認された。今後は,この蛋白から分離精製したADMの抗菌効果を検証する予定である。
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