研究概要 |
関節リウマチの発症・進行の抑制作用や血管新生作用など様々な免疫調節機構に関与しているだけでなく近年,抗菌作用があることも報告されているアドレノメデュリン(Adrenomedullin:以下,ADM)およびその関連ペプチドを発現する形質転換株砿(E.Coli BL21株)を,前年度作製することに成功した。本年度は形質転換株から分泌されるADMおよびその関連ペプチドの口腔細菌に対する作用を検索したところ,以下のような知見を得た。すなわち,1)セルカルチャーインサート(0.4μmφポアサイズ)を用いて,その内外の培地に形質転換株(ADM(1-52)あるいは関比較的静菌作用の強いADM(13-52)fragmentを発現する株)と口腔細菌(Streptococcus mutansあるいはPorphyromonas fingiralis)各々を接種レ,3,6,9および12時間共培養を行い,各々の時点で分取した口腔細菌の生菌数を計測したところ,形質転換株の作製に用いたE.Coli BL21株との共培養を行った対照群に比して,S.mutansおよびP.gingiralis双方に対する増殖抑制効果を示した。2)過剰量の抗ADM抗体を添加した培地中で同様の培養を行ったところ,この増殖抑制効果が減じられたことから,これら口腔細菌に対する増殖抑制効果が,形質転換株から分泌されるADMによるものであることが示唆された。今後は,これら形質転換株と口腔細菌の共培養を象牙質薄板を用いた齶蝕誘発モデルに応用し,バイオフィルム形成におけるADMの効果を免疫組織学的および形態学的に検証する予定である。
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