研究概要 |
本研究では,酸性,親水性および多官能性メタクリル酸アミドモノマーを合成し,加水分解安定性および接着耐久性の高いワンステップボンディング材接着システムを構築することを目的としている。これまでに酸性(リン酸基:1種[結晶],カルボキシル基:2種[液体と結晶]),親水性(水酸基:[結晶]),多官能性モノマー(4種[結晶]の合成には成功しているが,合成した多官能性モノマーがすべて結晶性を示すため,ボンディング材の試作には至っていない。現在,モノマーの結晶化を防ぐため,分子内に立体障害の大きい側鎖を導入した多官能モノマーの合成を試みている。 本研究を推進するための予備実験として,これまでに酸性および多官能性メタクリル酸エステルモノマーを用いたボンディング材を調製し,ボンディング材への水の添加量が歯質アパタイトの脱灰量,歯質へのボンディング材の接着強さに及ぼす影響を検討した。その結果,水の添加量が多くなるにつれてエナメル質の脱灰量,エナメル質へのボンディング材の接着強さは増加することが判明した。しかし,象牙質はエナメル質より強く脱灰されるにも拘わらず1試作ボンディング材はエナメル質より象牙質に接着しにくいことが明らかとなった。そこで,試作ボンディング材に親水性モノマーを添加し,親水性モノマーの添加が象牙質接着性に及ぼす影響を検討した結果,親水性モノマーは効果的に象牙質に対するボンディング材の接着強さを向上させることが明らかとなった。つぎに,多官能性モノマーへの酸性モノマーの添加量が歯質アパタイトの脱灰量,歯質へのボンディング材の接着強さに及ぼす影響を検討した結果,酸性モノマーの添加量が多くなるにつれて歯質アパタイトの脱灰量は増加するが,ボンディング材の接着強さまある濃度以上で一定値を示す傾向を示した。今後,酸性モノマーの添加量が接着耐久性に及ぼす影響を検討する予壱である。
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