研究概要 |
近年開発されたEr,Cr:YSGGレーザーは、エナメル質および象牙質を効率的に切削することが可能であるが、切削メカニズムが明らかでなく非接触であるが故に回転切削と比べて窩洞形成のコントロールが非常に難しい。そこで、まずハイスピードカメラ(動き解析マイクロスコープ・キーエンス社)を用いてEr, Cr:YSGGレーザーによるヒト歯エナメル質および象牙質の切削を撮影し、モニタリングにより切削メカニズムの分析を試みた。レーザー切削では適度な比率のウォータースプレーが必要であるが、撮影時にウォータースプレーによる水滴がレンズ表面に付着したため、明瞭な画像を得るのは非常に困難であった。そこで、できるだけウォータースプレー中の水の配合率を低く抑えた(4.0W/60%Air/40%Water)結果、比較的明瞭な画像(50倍)が得られた。撮影した画像をモニタリング(フレームレート:250)により分析した結果、ウォータースプレーとともにレーザー光が照射された歯面が白く光った瞬間に水が周囲に拡散したことが判明した。したがって、このモニタリング分析は、ウォータースプレーとともにEr,Cr:YSGGレーザーが照射されるとエナメル質では小柱間、象牙質では基質内で微小水蒸気爆発が生じて破壊・切削が生じるという報告(Maziar M,Lasers Med Sci,2009)を一部支持する結果となった。今後、照射面の微細形態を観察してエナメル質および象牙質におけるどの部分が破壊されるのか、詳細に検討していく予定である。
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