研究概要 |
1.粉末のプラズマ処理は直接送風管から超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を導入すると電極が汚染し,プラズマの性能が低下した.その原因は使用したUHMWPEを含め市販されている多くの粒径は約200~300μmであり,分散性が悪いため電極に融着したと考えられる.そのため,粒径が25μm程度の分散性の良いUHMWPEを導入することにより,UHMWPE粒子のプラズマ処理に成功した.さらに,プラズマ処理装置へのUHMWPE粒子の導入方法を変えてメッシュ状の筒を使用して,循環させたことも成功に貢献したと考えられる. 2.プラズマ処理したUHMWPE粉末を義歯床用レジンの粉末に添加して作製した義歯床の曲げや硬さなどの機械的性質は添加量を変えることにより,コントロールでいるようになった.しかし,粒径が25μmのUHMWPE粒子を床用レジンに添加すると白濁や剛性との低下が見られた.そのため,ナノ粒子とUHMWPE粒子を複合させて次年度からは実験を行う予定をしている. 3.近年,熱可塑性レジンを用いたノンクラスプデンチャーが臨床で多く採用されるようになってきた.しかし,適合性は悪く,床(レジンクラスプ部)の破折などの問題がある.一方,我々が以前から作製しているメタルフリーデンチャーは重合型アクリルレジンを使用するため,適合性に優れているが,ブロックアウトや設計が悪いと破折が起こる,本研究のナノ/ミクロンUHMWPE複合粒子を用いた床用レジンを使用することにより,技工サイドで各義歯のブロックアウトや設計に合わせた理工学性質を有する義歯が製作可能になり,患者さんのQOLが向上し,歯科医療への貢献ができることによる意義は大きい. 4.最終年度はナノ/ミクロン複合粒子割合や添加量と義歯床の理工学性質との関係を明らかにし,技工サイドでオーダーメイドの性質を有する義歯を製作できるマニュアルを作成する予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目的としていた,超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)粉末へのプラズマ処理法を確立した.本研究では,飛散性のある粉末へのプラズマ処理であるため,バルクへのプラズマ処理とは照射の効果にバラツキが生じた.しかし,分散性が良く,平均粒径が30μm程度の微細なUHMWPEを用いて実験を行った結果,効果のバラツキは低減した.プラズマ処理装置への粉体導入の新しいアイディアが実験の成功に導いたと考えている
|
今後の研究の推進方策 |
プラズマ処理した超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)粉末を義歯床用レジンに添加することにより,一部の性能は向上したが,低下した性能も現れた.そのため,UHMWPEにジルコニア粉末等の粉末を添加したレジン床の白濁が増加し満足する性能が得られなかった.その対策として,親水および疎水処理をしたナノサイズのシリカをUHMWPEと複合して添加することを次年度の実験で検討する予定である.すなわち,ナノ/マイクロ複合粒子の採用により,より優れた性能の床用レジンを含めた歯科材料の開発を行う予定である.
|