目的:歯周疾患と全身疾患との間に因果関係があることが,これまでにいくつか報告されている1).しかし,残存歯数と全身疾患への罹患に関する縦断的研究はほどんどない.そこで本研究は,60歳以上を対象に5年間の追跡調査を行い,残存歯数が生活習慣病の罹患に及ぼす影響ついて検討を行った. 方法:対象者は,2002年から2006年にベースライン調査に参加した大阪府高齢者大学講座受講者のうち,それぞれ5年後の追跡調査に参加した者とした.ベースライン時に心疾患,高血圧ならびに糖尿病のいずれも有さなかった409人(男性181人,女性228人,平均年齢65.4歳)に対して,5年後に上記3疾患のうち1つでも罹患した群(罹患群)と,いずれも罹患しなかった群(非罹患群)の2群に分類した.統計学的分析には,罹患の有無を従属変数,残存歯数を独立変数とし,年齢と性別を調整したロジスティック回帰分析を行った. 有意水準は5%とした. 結果と考察:5年後に87人(21.3%)が,3疾患のいずれかに罹患した.また,ロジスティック回帰分析の結果,ベースライン時の残存歯数は疾患の罹患に関して有意な説明変数となった.以上の結果より,残存歯数は生活習慣病に影響することが示唆された.
|