補綴処置ののち残存組織の健康を維持することは極めて重要である。しかし、実際の臨床では、補綴装置の支台歯が失われ、菌の欠損が拡大することも多い。では、なぜ欠損が拡大していくのか?この疑問を解決するためには、まず欠損がどういった要因で拡大していくかを実際の症例を基に調べる必要がある。そこで本研究は、一般開業医を対象に欠損補綴治療が終了した症例の残存歯の生存について臨床データを収集・蓄積し、データベースならびにインターフェイスを開発すること、また欠損拡大に関連する因子について検討することを目的とした。 本年度は協力の得られた各医院よりデータ収集を依頼し、そのうち21医院よりデータを回収した。 また、サーバーにより管理されたHDDに専用のスペースを設け、複数人によるデータの入力作業ができるようにデータベースを構築した。 その後、本年度はその中から200症例の欠損の拡大に関連するデータについて分析を開始した。 分析の結果、部分床義歯の支台歯はそうでない歯にくらべ、破折による抜歯の割合が高いことや上顎の支台歯は下顎の支台歯にくらべ、臼歯は前歯にくらべ、臼歯部の咬合接触がないものは咬合接触があるものにくらべ、同顎の残存歯数が少ないものは多いものにくらべ、失活歯は生活歯にくらべ抜歯される割合が高いことなどが明らかとなった。 ただし、本年度のデータの中には義歯の設計などの詳細な情報が含まれていないため、今後さらなるデータの収集を進めていく予定である。
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