研究概要 |
本研究では、客観的に口腔習癖の評価の妥当性と信頼性を検討し、被験者個々のストレス対処パターンおよび生活パターンを考慮しながら精神的ストレスと口腔習癖の関係を明らかにしたい。本年度は単極誘導超小型ポータブル筋電計(Actiwave EMG : CamNtech, Ltd., 以下A-EMGと略す)を用いた顎筋活動測定の妥当性を検討した上で,自宅環境での夜間睡眠時筋活動を計測,ブラキシズムの客観的評価に応用可能かを検討した.健常者5名(平均年齢29.0歳)を対象に,任意のレベルで噛みしめて,咬合力を咬合力計(オクルーザルフォースメーターGM10:長野計器)にて測定した.同時にA-EMGを用いて右側咬筋部から単極誘導で筋電図を導出,解析ソフト(AcqKnowledge : Biopac Systems, INC.)で筋電図実効値を求め,咬合力との関係を分析した. 健常者10名(男性5名,平均年齢25.0歳,女性5名,平均年齢23.4歳)にブラキシズムに関するアンケートを行い,夜間睡眠時の顎筋活動を平日の2夜,A-EMGを用いて記録した.最大噛みしめ時を基準として一定の筋電図実効値レベルを超える持続時間(Duration)を求めた.咬合力と筋電図実効値の回帰分析の結果,決定係数(R^2)は0.92~0.97の値を示し,本装置の妥当性が示された.夜間睡眠時の顎筋活動を検討した結果,ブラキシズム自覚者5名のうち2名は80%MVC以上の強い筋活動を示し,非自覚者5名では強い活動を示すものはなかった. 本超小型ポータブル筋電計は顎筋活動を測定するための妥当性があり,被験者自身で容易に装着可能で違和感が少なく,自宅環境で夜間睡眠時の顎筋活動を記録できることなどが判明し,ブラキシズムの客観的評価にとって有意義であることが示唆された.
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