研究概要 |
事前調査として顎関節症外来来院患者(2003年5月~2008年7月末,1987例)の顎関節症外来記録に基づく後ろ向き調査結果をまとめて,第23回日本顎関節学会総会・学術大会にて発表し、この内容の一部は日本顎関節学会雑誌に掲載された(第23巻2号、2011.P83-89)。これに引き続いて、この1987例中、初診時の記録が完備されており、一応の終診となった患者群から、通院期間が91日以上、通院回数が3回以上の症例について詳細な検討を行った。この条件に当てはまる中長期通院群は200例(対象受診者群中18.5%)症状改善群66例(同6.1%),症状軽度改善群90例(同8.3%),,症状不変・悪化群44例(同4.1%)であった。この3群の比較では,年齢,男女比,通院期間,通院回数とも有意差は認められなかった。ただし各群内での初診時と終診時の比較では,無痛および有痛自力開口量(mm),疼痛および日常生活支障度VAS値のいずれについても,有意に改善を示していた(Wilcoxon検定,P<0.01)。症状改善群と症状不変・悪化群の比較では,心配事・不安・ストレスなどが多い方だとの自覚がある症例や,顎関節雑音を認める症例で症状不変・悪化群となるオッズ比が高かった。これらのことから疼痛VAS値や開口量が数値的には改善を示しながら,総合的な患者自己評価としては改善を認めないまま長期来院を続けている症例が少なからず存在し,中長期症例における終診判断など対応の難しさが明かとなった。つぎにこれらの知見と査読者とのやり取りから、新規調査項目を再検討し、2006年以降の受診患者について全数調査を行っている。2006年1月から2010年12月までの顎関節症外来初診患者の動向調査では、季節的変動に男女差が認められている。
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