研究概要 |
徳島大学病院歯科診療部門を受診し,顎機能レポートシステムに記録のある症例について後ろ向き調査を行った。選択基準を満たした解析対象群の通院期間は約80%が90日以下であった。通院期間91日以上の200例の調査では,患者自己評価で分類した症状改善群66例,軽度改善群90例,不変・悪化群44例で比較したところ,他覚的自覚的症状については不変・悪化群でも,開口量,疼痛VAS値は初診時と終診時で比較すると有意に改善を示していたが,終診時の日常生活QOL自己評価VAS値が不変・悪化群で悪く有意差を認めた。これは中長期通院群には,他覚的自覚的症状の改善が必ずしも日常生活の自覚的QOLの向上につながらない症例が存在し,これが通院期間の長期化に関与していることが考えられた。次に2006年度と2010年度の受診患者について医科歯科連携に関する調査を行った。来院に際しての紹介率は68.7%であり,内訳は院外医科(15.7%),院外歯科(33.0%),院内医科部門(5.6%),院内歯科部門(14.4%),自発来院(31.3%)であった。2006年(顎関節症外来開設年)と2010年の比較ではP<0.001(Pearson のカイ2乗検定)で有意に比率の差があり,院内歯科部門からの紹介比率が増加し自発来院比率が低下していた。院内,院外合わせた医科からの紹介元は特定の診療科に限定されず多様な診療科にわたっていた。逆に顎関節症外来から他科への紹介は575例中47例(8.2%),内訳は院外医科(1例),院外歯科(15例),院内医科部門(17例),院内歯科部門(14例)と少数にとどまっていた。特に医科への紹介は全部で18例(3.1%)であり,医科部門への紹介が必要と判断される例はそれほど多くはなかった。これは元々顎関節症外来への受診紹介率が約7割であり,事前にスクリーニングされていることによると考えられた。
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