研究概要 |
咬合感覚異常の発症メカニズムを解明するために,咬合接触頻度を増大させる睡眠時と覚醒時のパラファンクションである睡眠時ブラキシズム(Sleep Bruxism; SB)ならびに日中歯牙接触習癖(Tooth Contacting Habit; TCH)の有無と咬合感覚との関連性を検討した. 被験者は,顎口腔系に機能異常を認めない成人36名に対し,問診(質問票)と臨床的診断,音声・ビデオ映像付きPSG検査,TCH測定システムを用いて. SB とTCHの有無によりグループ1(SB+,TCH+),グループ2(SB+,TCH-),グループ3(SB-,TCH+),グループ4(SB-,TCH-)の合計4グループに分類した.被験者36名中6名がドロップアウトしたため,各グループの被験者数は,グループ1が8名,グループ2が6名,グループ3が7名,グループ4が9名となった.咬合感覚の指標とした歯根膜の判別閾は,我々の過去の報告と同様に5~50μmで5μmごとの金属箔をランダムに咬合させ,判別できた最小の値の平均値とした. その結果,グループ1(SB+,TCH+)が21.9μm,グループ2(SB+,TCH-)が20.3μm,グループ3(SB-,TCH+)が25.6μm,グループ4(SB-,TCH-)が29.1μmとなった.統計解析の結果,4グループ間に有意な差はなかったが,SBの有無による2群の比較(グループ1,2 vs グループ3,4)では,グループ1,2の歯根膜の判別閾は有意に小さな値となり,我々の過去の報告と一致していた.一方,TCHの有無による2群の比較(グループ1,3 vs グループ2,4)では,有意な差はなっかた. 以上のことから,睡眠時ブラキシズムは歯根膜感覚を鋭敏化する可能性があるが,日中歯牙接触習癖は,歯根膜感覚の鋭敏化との関連性はないことが明らかとなった.
|