研究概要 |
知識には言葉や数字で表現できる知識と、目に見えにくく表現しにくい「暗黙知」がある。しかし、表現しにくい自分の動きや体感をメタ認知的に言語化することが身体知を学習獲得するためのツールとして有効であるというメタ認知的言語化が提唱されている。本研究の目的は、臨床経験豊富な歯科医師の「暗黙知」を言語化するメタ認知活動から、補綴治療における義歯治療手技の暗黙知の構造と獲得過程を検討し「形式知」として得ることを目的とする。 平成22年度は、言語化されたメタ認知データを分析することから、熟達に及ぼす影響を検討した。歯科医師に対して義歯治療の際に振り返りを依頼し、(1)思考(2)手指、身体各部の動き(3)五感的知覚(五感的に何を感じているか)(4)自己受容感覚(筋肉や関節を動かした結果、どんな体感を受けたか)(5)心理状態の5つのフェーズを意識して、関係すると思われる気になったことを極力、言語化するよう依頼した。しかし、振り返りにおいて治療の全てを口述することは難しく、負担が大きく、記載漏れが多いことが認められた。 そこで、印象採得にのみ焦点を絞り検討することとした。さらに客観性を高め、記憶再認の手がかりとするために、術者が言語化しながら印象採得する過程をビデオ撮影し、映像と言語化データをスクリプトとして文字起こしたデータを比較することとした。またスクリプト化できない術者の手技については、Virtual Realityにより再現するシステムを現在作製中である。位置測定は、印象採得用トレーにマーカーを取り付けてUSBカメラで位置測定を行い、測定精度は0.5mm程度で推定できると確信を得た。圧測定については、トレーに力センサを取り付け,歪ゲージ用アンプで増幅し,A/D変換器を通してPCに記録するシステムを加えてさらに構築中である。
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