研究概要 |
今年度は、噛むこと(咀嚼)の感覚刺激が脳に与える影響を知るために,インプラント義歯および従来の義歯(総義歯)を装着した高齢者に対して磁気共鳴機能画像法(fMRI)を用い、義歯の違いによる脳の賦活状態について調べた。被験者は、本学附属病院補綴科に義歯への不快感を訴え来院し、インプラント治療を希望した4名(男1名、女3名,64-79歳)の患者を対象とした。患者には事前に,義歯装着時とインプラント治療後にfMRIによる評価を行うことを十分に説明し,同意を得て治療を行った。計測は、義歯装着時とインプラント治療後にそれぞれガムによるチューイングテストを行った.32秒間のチューイングと32秒間のレストを交互に5分間繰り返し行うブロックデザインを用いた.EXCITE HD 3.0TMR (Signa)スキャナーにて撮像し,BOLD法により評価を行った.Echo-planar imageはTR:2000ms, TE:30ms, matrix size64*64, slice thickness:3.8mm, slice gap:0.2mm,スライス枚数32枚の条件で行い,SPM5により脳賦活部位を同定した。その結果、グループ解析では、インプラント義歯および従来の義歯(総義歯)において一次体性感覚野・補足運動野・島・視床・小脳・前頭前野の領域で賦活が認められた。また、ROI解析(region of interest)では、総義歯と比較して、インプラント義歯による脳賦活量は小さくなる傾向を示した。特に前頭前野の前頭極(BA10)で有意な差が認められた。このようなことから、インプラント治療によって,咀嚼に伴う脳活動パターンが可塑的に変化することが観察された。
|