研究課題/領域番号 |
22592169
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研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
木本 克彦 神奈川歯科大学, 歯学部, 教授 (70205011)
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キーワード | 光トポグラフィー / 前頭前野 / 咀嚼 / ウェルニッケ野 / NIRS-SPM / NIRS-SPM |
研究概要 |
今年度は、噛むこと(咀嚼)の感覚刺激が認知機能に与える影響を知るために,連続的な短期記憶課題の遂行前後でガムチューイングを行った際の脳活動を光トポグラフィを用いて調べた。[方法]25-33歳の成人10人に27問の3-back課題を、300秒のインターバルをあけて2回行った。被験者はインターバルの間に味も匂いもないガムベースを1Hzの頻度で60回咀嚼した。頭表上での光トポグラフィのチャンネル位置を3Dディジタイザにより計測し、脳表上での計測部位を特定した。被験者に共通する脳活動を一般化線形モデル(generalized linear model)を用いてNIRS-SPMにて同定した。被験者には測定後にVisual Analog Scaleによるアンケートを行い、主観的な集中力の度合いを報告させた。[結果および考察]3-back課題の遂行は、上側頭回(BA22)、下前頭回三角部(BA45)を賦活させた。これらの部位において、チューイングは課題の遂行に伴うオキシヘモグロビン(OxyHb)濃度変化量の最大値と総変化量を増加させる傾向があった。特に、右側の上側頭回、下前頭回ではOxyHb濃度変化が最大値に達するまでの潜時がそれぞれ有意に短縮(p=0.03)または短縮する傾向(p=0.19)があった。さらに、チューイングは主観的な集中力の指標を向上させ、回答するまでの反応時間を低下させる傾向があった。NIRS-SPMによるグループ解析では、共通して活動を見ることができる部位に広がりが見られた。チューイング後には、チューイング前の課題遂行時において賦活した脳部位に加えて、左前頭前野、右縁上回、右上側頭回周辺にも活動がみられた。これらの結果から、ガムチューイングは持続的な認知課題の遂行において低下してくる集中力を回復させ、認知課題の遂行に必要な前頭前野や、音声言語処理を担うウェルニッケ野の活動を促進させる効果があり、認知機能の持続的な維持に有効である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
NIRS-SPMによる解析法の確立と認知機能を測るタスク(2-back課題、3-back課題かなひろいテスト)の選択に予想以上に時間を費やした為。
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今後の研究の推進方策 |
NIRS-SPMによる解析法の確立と認知機能を測るタスクは決定したので、今年度は、患者データの収集とその解析を行う。
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