顎顔面補綴治療に用いる人工物は,その大きさ故に骨再生のニーズは高く,今後は細胞を用いた安全で確実な骨再生医療が望まれている。再生医療においては再生組織をあらかじめ工業的に大量生産して,必要時にいつでも利用可能にするには,培養系を用いたin vitro組織再生が望ましい.すなわち,イヌでの細胞移植研究を通じ,そのin vivoでの機能性を解析し,喪失した顎骨組織の再生治療の基盤を確立することが本申請の目的である. 平成23年度にイヌiPS細胞を神経堤細胞を経て誘導した骨芽細胞様細胞を内部まで均一に播種できる足場材料について検討を行った。レーザーアブレーション法を用いて、ハイドロキシアパタイト薄膜(HA)を吸収性ポリ乳酸不織布足場(PLLA)にコーティングし、HAPLLAを作製した。HAPLLAをラット頭蓋骨欠損に移植し骨再生能を調べた。 電子顕微鏡画像から、PLLAの表面にはHAを含む薄膜が存在し、三次元多孔質構造を持つことが確認された。EDXの測定結果から、不織布表面だけでなく内部までカルシウムとリンが確認されたため、PLLA内部までHAコーティングされていると考えられた。マイクロCT三次元カラーマッピングの結果、PLLA群およびHAPLLA群では経時的に欠損部の硬組織が増加していることが確認された。マイクロCT画像解析の結果、骨体積のパラメーターにおいて移植後2週でHAPLLA群はPLLA群に比べ有意差を示した。さらに、移植後4週においてHAPLLA群は他の群に比べ有意差を示した。移植後6週においてHAPLLA群はPLLA群及びコントロール群に比べ、骨体積、骨塩量、骨密度のすべてのパラメーターにおいて有意性を示した。また病理組織学的評価より、移植後6週のHAPLLA群はPLLA群と比較しPLLA繊維の吸収があきらかに多く、既存骨辺縁では新生骨の形成も確認された。
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