我々は、短時間で、かつ製作過程で特殊な器材を必要としないオールセラミッククラウンの製作を可能にする新製法の開発研究を行ってきた。これまでの研究で、コーピングの強度が大きい条件は、製作時の練和用粉末の粗粒子アルミナ粉末、微粒子アルミナ粉末およびリチウム珪酸ガラスの混合比(重量比)が40:50:10であったことがわかった。 今回の研究ではセラミックコーピングの支台歯への適合改善を検討した。コーピングの製作時の練和用粉末の条件は、上記の混和比とした。臼歯部支台歯形態を模型化した金型を使用し、金型を複模型用印象材で印象後、超硬質石膏で作業模型を製作し、その上にコーピングを製作した。支台歯形態の種類は、軸面テーパー角 6°とし、支台歯辺縁形態はラウンデッドショルダーとした。コーピングの基本の製作方法はすでに報告した方法で行った。製作工程のうち、コーピング乾燥時にヘアドライアーの熱風を利用し、ガラス含浸焼成時間を30,40および50分として、適合の改善方法として適切であるかを検討した。適合試験はコーピングを作業模型に復位したときの辺縁の浮き上がり量を計測し検討した。計測は一次焼成後および二次焼成後に行った。また、製作したコーピングに築盛する前装用陶材の色調への影響を、歯科用分光光度計を用いて調査した。 結果、いずれの製作方法においても二次焼成後の浮き上がり量は、一次焼成後に比べて大きな値となった。熱風乾燥を利用した製作方法では自然乾燥よりも浮き上がり量は小さくなった。ガラス含浸焼成時間を短縮した二次焼成後の浮き上がりは、各焼成時間条件間に有意な差はみられなかったが、30分の焼成時間でもガラスの含浸は充分であった。新製法のコーピングは前装用陶材の色調に影響を及ぼさなかった。
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