塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)は、歯周組織再生において重要な役割を果たす歯根膜細胞に対してその増殖活性を濃度依存的に促進するが、本研究ではそのことに加えて細胞遊走活性に及ぼす影響について検討した。実験においてはマウス由来の歯根膜細胞のクローニングをおこない、アルカリフォスファターゼ活性ならびに硬組織形成能の高いクローンである、MPDL22を樹立し、本実験に供した。遊走実験は、24穴培養プレート内にfilterメンブレン(6μm pore)をおいてウエル内を上下層に分け、filter上部に播種した細胞が一定時間内にメンブレン下層に遊走した細胞数を計測するアッセイ法を用いた。また一部の実験ではチャンバースライドにsilioonシートを静置して細胞を排除し、siliconシートの除去とともにFGF-2を添加して、細胞free spaceに遊走してきた細胞数の計測によって遊走活性を評価した。その結果、FGF-2がMPDL22の増殖活性を促進することが確認され、さらにはいずれのアッセイ法においてもMPDL22の遊走活性を促進することが明らかになった。興味深いことに、前者の遊走アッセイ法ではFGF-2刺激のない場合に比べ、上あるいは下層にFGF-2を添加するとMPDL22の遊走は促進されるが、刺激の上部細胞播種側にのみFGF-2を添加した場合よりも下層に同じ濃度のFGF-2を添加した場合の方が高い遊走活性を示した。このことから、FGF-2刺激が促進するMPDL22による遊走活性は、走化性も持ち合わせていると考えられた。またこの遊走活性はPI3Kシグナル伝達系の阻害剤である、Wortmannin and LY294002にて抑制されたことから、このFGF-2依存性の遊走促進作用にはPI3K経路の関与が示唆された。
|