研究概要 |
人工股関節のステム部や人工歯根などのように荷重が負荷される部位の代替材料として使用される人工材料は,高強度を有するとともに,生体との力学的性質の適合性の観点から弾性的性質が生体骨にできるだけ近似していることが望ましい。本研究では,量子合金設計法からチタンに添加することにより弾性率の低下が期待できるHf元素に着目し,20,40,60,80at.%の濃度でHfを添加したTi-Hf系合金を作製し,各合金の密度,試料中を伝播する超音波の縦波と横波の音速の精密測定からヤング率,剛性率,ポアソン比を求めた。さらにX線回折実験により,凝固のままの各合金の結晶構造を解析した。得られた結果を要約すると次の通りである。 1. Tiに対する少量のHf添加によりヤング率と剛性率がともに低下し,Ti-20at.%Zr組成でそれぞれ最小値112.2GPa,42.5GPaを示した。 2. Ti-Hf合金のポアソン比の組成依存性は,ヤング率や剛性率の組成依存性とは逆の傾向を示し,Ti-20at.%Hf組成で最大値0.318を示した。 3. 筆者らがこれまでに実施してきたTi-Zr合金の弾性的性質の検討結果と比較すると,Hf添加によりTiの弾性率が低下する程度は,Zr添加の効果には及ばないことが明らかとなった。 4. Tiに対するZr添加およびHf添加のいずれにおいても弾性率の低下が確認されたことより,量子合金設計法の有効性が裏付けられた。 5. 作製した4種類のTi-Hf合金と純Hfの凝固のままのサンプルの結晶構造は,低温安定相のα相(最密六方格子)の他に,高温安定相のβ相(体心立方格子)が一部残存した(α+β)2相共存状態であることが分かった。
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