初年度は、均一な結晶を作製するため、アパタイト合成装置の開発と調整を主体に行い、数パターンの結晶合成実験を行った。 装置の最終的な組合せは、セパレート式の多孔フラスコを湯煎する形で加温することとした。これにより、溶液の部分的かつ急激な温度変化が抑えられた。フラスコ内の水溶液を均一に攪拌するためには、丸底のフラスコを用い、ラグビーボール型の撹拌子を採用した。これは、平底フラスコだと中心部と辺縁部の水流にむらができるためや、攪拌棒を用いたモーター式では装置が大きくなり、操作しにくいためである。温度とpHを継続的に計測するためには、100度まで耐えられる測定端子を用い、リアルタイムで計測した。また、イオン溶液の滴下は3台のマイクロチューブポンプで行った。 今年度の結晶合成には、Ca(NO_3)_24H_2OあるいはCa(CH_3COO)_2H_2Oと(NH_4)_2HPO_4を用い、純水中にこれらを滴下していく方式を用いた。pH調整にはKOHを使用した。また、結晶性の低下を促すためにはMg(NO_3)_26H_2Oを合成溶液に添加し、結晶性を高めるためにはNaFを利用した。合成条件は、80±1℃で、pHは7.3±0.1とした。その結果、Ca(NO_3)_24H_2OあるいはCa(CH_3COO)_2H_2Oと(NH_4)_2HPO_4の組合せでは滴下開始20分後で針状の結晶が合成され、その外形的な違いはほとんど無かった。これらの結晶は時間経過と共に増量したが、大きさの増大傾向はあまり明瞭ではなかった。Mg(NO_3)_26H_2Oを合成溶液に添加したものでは、針状結晶は形成されず、amorphous calcium phosphateと思われるものが最終産物として形成された。これに合成途中でNaFを添加しても結晶性は回復しなかった。従って、Mg(NO_3)_26H_2Oの添加量を検討する必要と、大きさを増大させる方法の検討が必要と考えられた。
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