本研究の目的は,再生医療にとって不可欠な血管新生を誘導・制御するために骨再生過程における血管新生に着目し,骨再生の可能性およびそのメカニズムを解析することを目的とした。そこで本研究の著者は,臨界および非臨界の骨欠損における血管新生と骨再生の動態を比較観察することを目的とし,ラット頭頂骨骨欠損モデルに血管造影法を応用して,放射線学的および組織学的な観察と分析を行った。ラットの頭頂骨右側に,直径5.0 mmの臨界骨欠損を,左側に直径2.7 mmの非臨界骨欠損を形成し,施術後 7,14,21および28 日に血管造影を行いながらマイクロCT撮影を行い,骨欠損内の血管新生と骨再生を観察し,その体積変化およびそれぞれの骨欠損に対する割合を定量解析した。さらに術後 14 および 28 日においては,組織学的な観察も行った。その結果,骨再生時の新生血管は,臨界および非臨界の骨欠損のいずれにおいても骨膜側および既存骨の両方に生じた。新生血管は,非臨界骨欠損では骨欠損部全体に広がるように形成されたが,臨界骨欠損では欠損部全体には広がらなかった。血管新生と骨再生は,臨界および非臨界骨欠損のいずれにおいても,経日的に増加した。血管新生と骨再生との間には,臨界および非臨界骨欠損のいずれにおいても,正の相関性を認めた。とくに,非臨界骨欠損で高い相関性があった。本研究の結果から,マイクロCTと血管造影法の併用によって,骨欠損再生時における血管新生の詳細な観察および解析が可能であることが示された。また,ラット頭頂骨に形成した骨欠損では,血管新生量と骨再生量とに高い相関性が認められ,血管新生が骨再生を調節している可能性が示唆された。
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