研究課題/領域番号 |
22592199
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
新井 嘉則 日本大学, 歯学部, 特任教授 (20212607)
|
キーワード | マイクロCT / 実験動物 / 骨 / 再生 / 同期 |
研究概要 |
ラット・マウスなどの実験動物を麻酔下で生きたままマイクロCTで撮影することは、同一の動物を経時的に観察することが可能で、その意義は大きい。屠殺する必要がなく動物愛護の観点からも有益である。しかしながら個体によっては呼吸などによる大きな体動があり、画質の劣化が避けられない問題点があった。特に、頭部は複雑な形態でその影響が大きかった。本研究の目的は、この体動を補正し、鮮鋭なCT画像を得ることである。 本年度は、ラットの下顎骨をCT撮像した30症例の投影画像を使用した。ラットは左側下顎骨が團転中心付近に位置づけられた。撮像時間は17秒間で、1回転する間に512枚の投影画像を収集した。この30症例の中から、呼吸による体動が激しくCT画像が特に劣化している3症例を選択し、本研究に使用した。 補正方法は、体動のあるラット下顎骨の投影画像の中心部の体軸方向のラインを抽出した。このラインの輝度を投影画像のフレーム数でX方向へ移動することで、M-modeの画像を制作した。これによって、M-modeの画像には呼吸による体動の軸方向の軌跡が表示された。さらに、このM-mode画像の第1大臼歯の近心隣接面の位置の変化を最小二乗法で求めることで、各投影画像の体軸方向の移動量を求めた。この移動量から、投影画像の体軸方向のブレを補正した。 最後に補正された投影画像からCT画像を再構成し、補正前の画像と比較した。 この結果、補正前は体動によるボケによって歯根膜空隙観察されなかったが、補正後はそれを鮮明に観察することが可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の実施計画では、USBカメラを用いて、動物の体動を観察し補正を実施する予定であった。しかし、同期が難しく、障害となっていた。そこでM-modeによる方式を新たに考案し、非常に良い結果が得られた。また、実験動物のCT画像においても、保管してある大量のデータを使用することができ、効率よく補正に必要なデータを取得することが出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
M-modeを制作し、補正をすることから、回転中心付近にコントラストの大きな被写体が存在することが必要条件となっている。また、体軸方向のブレしか補正できないことから、他の運動によるプレが補正できない欠点がある。したがって、片側の下顎骨の体動の補正には有効であるが、他の部位では本補正方法は最適化されていない。 今後は、この点を考慮してアルゴリズムの改善をしていきたい。
|