ラット・マウスなどの実験動物を麻酔下で生きたままマイクロCTで撮影することは、同一の動物を経時的に観察することが可能で、その意義は大きい。屠殺する必要がなく動物愛護の観点からも有益である。しかしながら個体によっては呼吸などによる大きな体動があり、画質の劣化が避けられない問題点があった。特に、頭部は複雑な形態でその影響が大きかった。本研究の目的は、この体動を補正し、鮮鋭なCT画像を得ることである。 前年度までに、ラットの下顎骨をCT撮像して得た投影画像を使用して、呼吸による体動によって移動した歯の部分のm-modeの画像を制作し、位置の変化を最小二乗法で求めることで、各投影画像の体軸方向の移動量を求めた。この移動量から、投影画像の体軸方向のブレを補正した。しかし、コントラストの高い歯が周辺付近にあった場合は、体動による歯の移動量のトレースが出来ないものがあった。この欠点を克服することが求められた。 そこで本年度は、歯が撮影中にX線管球とセンサーの回転によって投影データ上を移動する量をもとめ、撮影中の投影データ上の歯の移動に対して常に追従するようにしてm-modeの画像を制作した。これによって、歯の体動による位置変化を、より正確に求めることが出来るようになった。最後に補正された投影画像からCT画像を再構成し、補正前の画像と比較した。 この結果、呼吸による体動が原因で歯根膜空隙などの微細な構造が観察されなかったものに対しても、補正後はそれを鮮明に観察することが可能となった。
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