研究課題
平成22年度に作製した亜鉛修飾型チタン系インプラント(Zn-Ti)は、細胞レベルにおいて骨形成能を示したため、in vivoにおける骨形成能のスクリーニングのために、線状の試料(同処理を施したチタン線)をラットの大腿骨に埋入した。しかし、骨折や感染により実験結果が安定せず、平成24年度は、Zn-Tiと骨との反応に関してウサギを用いて検討した。Zn-Tiの棒状の試料をウサギ大腿骨に埋入し,埋入後4,12,24週に摘出し試料と骨との間の接着(剪断)強度を測定した。Ti表面の錯体水溶液処理および未処理を問わず、インプラントを埋入した期間が長くなると剪断強度が大きくなった。すべての期間を通して、錯体水溶液処理インプラントの剪断強度は、未処理インプラントより高い値であった。さらに、表面が比較的滑らかなインプラントの剪断強度がアンカーリング効果を期待して行ったアブレーション処理インプラントとほぼ同じになっていた。つまり、錯体水溶液で処理することによって、アンカーリング効果以上の接着性が実現できた。また、剪断強度試験後のインプラント表面には,骨の接着が観察された。これは、骨自身の結合強度より、インプラントと骨との間の結合力の方が高いことを示している。今回作製したZn-Tiは、チタン表面に亜鉛錯体を修飾することで、生体内に埋入した後に亜鉛イオンを徐放させることができた。そしてこの亜鉛イオンは、材料周囲の細胞を骨芽細胞へ分化・増殖させ、さらに石灰化を促進させることが判った。徐放された亜鉛イオン濃度は細胞毒性をはるかに下回る値であったが、新生骨形成のために最適な徐放濃度に関しては、今後追加実験を行い、臨床応用に展開させる予定である。また、亜鉛の破骨細胞に及ぼす影響は検討していないので、骨吸収抑制作用がどの程度あるのかも解明する必要がある。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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