研究概要 |
関節円板で完全に上下に二分される顎関節の関節腔は,上下で形成時期も関与する細胞も異なる.特に下関節腔形成においては,下顎頭と関節円板の間の血管侵入と消失による裂隙の形成が重要であることを報告してきた.本研究では,下関節腔形成領域に存在する血管周囲の細胞および血管侵入に伴う細胞外基質や周囲の細胞め変化を微細構造学的、免疫組織化学的に検討した.下顎頭表層に沿って毛細血管の侵入が開始する胎生19日から下関節腔形成が完了する生後3日齢までのラット顎関節部を検索に用い,凍結切片およびパラフィン切片,電顕観察には樹脂包埋切片を作成した.また血管内皮細胞のマーカーとしてCD31またはRECA-1を用いた免疫組織化学により周囲細胞との関係を検討した. 胎生21日齢では血管内皮細胞の侵入に伴い,下関節腔形成領域では細胞間が拡大し,さらに大型の類円形細胞が出現した.この細胞は血管内皮細胞に接し,共に厚い基底膜様構造物で取り囲まれるが細胞内小器官に乏しく,明るいやや不整形の大型の核と細胞膜に沿ってcaveola様構造の膜陥入がわずかに発達していた.また血管内皮細胞マーカーRECA-1陽性反応は明らかな内皮細胞にのみ認められこの細胞は陰性を示した.毛細血管が明瞭な管腔を形成している生後0日齢ではこの大型細胞は消失し,血管内皮細胞周囲には基底膜とcaveola構造の発達した周皮細胞の裏打ちが顕著であった.血管周囲組織には,典型的な線維芽細胞とは異なる不整形のクロマチンに富む核と細胞内小器官が発達した多様形態を呈する細胞が散在し,周皮細胞から他の細胞への分化過程の可能性も考えられた.
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