これまでに私たちは、凍結保存歯でも-80℃以下で保存すれば歯周組織を再生させることが可能であり、プログラムフリーザーによる緩速凍結を併用すればより有効であることを明らかにしてきた。しかし凍結保存移植歯は再生過程には若干の遅延が認められる。また、臨床的には凍結保存移植歯は、緩慢な置換性歯根吸収が認められることがある。これらは凍結操作による歯根膜の損傷が原因であると考えられる。本研究の目的は、歯の移植の適応症拡大を目指して、凍結保存歯の歯根膜の再生を促すために凍結保存歯を解凍後すぐに移植せず、単離した歯根膜細胞と共に器官培養した後に移植する実験系を作成し、凍結保存歯移植におけるその有効性および問題点を明らかにすることである。 凍結操作によって損傷された歯根膜を可能な限り再生させた後に移植することを目的にラット臼歯を抜歯後、これを腹部皮下に移植する実験系を用いて組織学的に検討した。ラット臼歯を抜歯後にプログラムフリーザーによる緩速凍結をして80℃で4週間凍結保存し、解凍後に1週間器官培養した。その後、腹部皮下へ移植し、1、2、4週間後に移植歯を摘出し組織化学的に検索した。器官培養をした後に移植した移植歯は、今のところ明確な歯根膜の再生能の改善は見いだされなかった。今後は移植歯を単離した歯根膜細胞と共に器官培養してみるとともに、培養法を改良することで、凍結保存歯の器官培養の有効性および問題点を明らかにしていく予定である。
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